これが、あたしの彼氏です。【完】

「……あたしの林檎飴」

何故かドキドキとする胸の高鳴りを抑え込み、あたしは不満だと言わんばかりにギュッと眉間に皺を寄せる。

「一口食べたくらいでグチグチ言うな。短気かお前」

「な、短気じゃないよ…！そもそも矢沢君が……っ」

「あ？」

あたしがそう言って、声を大きくあげた次の瞬間、

「……あ、花火」

一発目の花火が、パァンっと大きな音をたてて奇麗に打ちあがった。



「うわあ、奇麗」

そこから次々と打ちあがる奇麗な花火は真っ暗な夜空に大きな花を咲かせて小さく散っていく。

「あたし、打ち上げ花火見たの凄く久し振り」

「ふーん」

「去年はここの夏祭り、花火大会なんてなかったの」

「へぇ」

さっきから素っ気ない返事ばかりを返す矢沢君は、チラリとあたしの方に視線を向けた。幾ら返って来る返事が素っ気なくても、矢沢君は必ずあたしの話を聞いてくれている。


その後も夜空にはいくつもの花火が奇麗な色を持ちながら打ちあがって、そのまま真っ直ぐと静かに落ちて行った。