これが、あたしの彼氏です。【完】
走って走って走り続けて、丁度目に止まった女子トイレに急いで掛け込んだ。
「………はあっ、はぁ、」
勢い良く走った所為で息が途切れて、心臓の高鳴りも未だに止みそうにない。
さっき剥がして来た紙をゆっくりと広げ、そこに書かれてあった文章に目を通した。
―――――"大スクープ!あの矢沢君が、彼女と熱々デート?相手はナント、二年三組東雲心!"
大きな文字でそれだけ書かれてあった内容を読みあげ、またズキンと心臓が痛んだ。
あまりにも唐突過ぎて、思考が全く付いて行こうとしない。混乱したままの脳内は一人ではどうすることも出来ず、ただズキズキと痛む心臓を何とか抑え込むことで精一杯だった。
「……。」
―――あの夏祭りの日、いつのまにか誰かに写真を撮られていたんだ。一体誰が、こんな事を――――。考えてみても当然見当は付かず、あたしは重い溜め息を一つ吐き捨てた。
「…とにかく、この事は絶対矢沢君にはバレないようにしなくちゃ…、」
その後、あたしは少し消極的になりながらも自分のクラスへと足を向けた。教室の扉を開けることに少し怖気つつも、あたしは勇気を出してガラッと扉を開けた。