これが、あたしの彼氏です。【完】
―――けれど、扉を開いた瞬間女子生徒の視線が一斉に此方へ向いた。その視線はどれも冷たくて、あたしは早速この場から逃げ出したい気分になった。
「……っ」
あたしは昔からクラスでも教室の隅に居るような地味な女だったし、喋れる子だって由希くらいしか居なかったけれど、こんなに注目されるような事が今までに一度もなかったから、ハッキリ言って今のこの現状は、――――凄く怖い。
あんな写真一枚で、こんなにも周りがコロッと変わってしまうものなんだろうか。けど、よくよく考えてみればそれも仕方のないことなんじゃないかと思った。何たってあたしの相手は、誰もが名前を知っていて秘かにモテはやされている、あの矢沢君なのだから。
あたしは居心地の悪さを感じつつも、誰にも目を合わさないように注意して、そっと自分の席に腰を下ろした。
その後、朝礼が終わり一時間目が始まる前の休憩時間、あたしの前に座っている由希が心配そうな顔で「心」とあたしの名前を呼んだ。
「…由希」
「心、何か色々と噂聞くけど全然気にする事なんてないよ。あんなの突然やって来て、いつのまにか消えていくものなんだから」
「…そういうものだったら良いんだけど…」