これが、あたしの彼氏です。【完】
予鈴のチャイムが鳴って教室へ戻ると、さっきの昼休みで決定的な確信を抱かれたのか、クラスの雰囲気がもっと悪くなっているように思えた。
…どうしよう、なんて思いつつ自分の席に着席すると、また変わらない噂や悪口があたしの耳に入って来る。
心の中で何度も溜め息を吐いていると、不意に「こーころ」といつもの聞き慣れた声が、頭上からそっと聞こえてきた。あたしはその声に安心して、ゆっくりと顔を上げる。
「……由希」
「…矢沢君、何か言ってた?」
周りに聞こえない程度の小声でそう聞いてくる由希にあたしは静かに首を横に振る。
「ううん。何も」
「そっか…矢沢君の前じゃみんな怖くて噂しないのかな」
「…多分。あ、そうだ、由希」
「ん、どうしたの?」
「今日、一緒に帰っても良いかな」
「え、今日?良いけど…、あたし今日も部活あるよ?」
「あ、そっか。じゃあ待ってる」
「良いけど、一時間半くらいは掛かるよ?それでも良いなら…」
「うん、大丈夫。今矢沢君と帰ったら、今よりもっとヤバい事になりそうで…」
「…確かに。分かった、じゃああたしもなるべく早く切り上げるように頑張るね」