これが、あたしの彼氏です。【完】
「えっと…、何でしょうか…」
「昼休みの事なんだけどさあー」
「………っ」
その言葉を聞いた瞬間、嫌でも体がビクリと震える。
「……まあよくも、初っ端から見せつけてくれたよねぇ。みんなの前でシンに名前で呼ばれちゃってさあ。東雲さん、下の名前で呼ばれてるんだね。…知ってる?シンって、自分が認めた子以外には下の名前で呼んだりしないんだよ」
「………あ、そ、そうなんだ…」
あたしが小声でそう言うと、何故か目の前のギャル達はいきなりギュッと眉間に皺を寄せた。
「……あんたさぁ、結構シンに気に入られてるみたいだけど、あんま調子こいてるとそのうち痛い目みるよ?付き合えてんのだって、ただの気まぐれなくせに」
「え。あの…、あたしは別に…」
「…何?何か言いたい事でもあんの?」
「………」
ギロリと睨まれ、あたしはついその気迫に押し黙ってしまう。
「……あのシンと付き合えるなんて今のうちだと思いなよ、東雲さん。………絶対、許さないから」
「………っ」
悔しそうにそう言うギャル達の言葉に、あたしは背筋がゾクリと震えた。
そんな恐怖と同時に、この目の前のギャル達は矢沢君の事が物凄く好きなんだと確信した。冷たい言葉と瞳に、全てを否定されているような気がした。
矢沢君と付き合ってるって噂が流れただけで、こんなにも今の日常がグニャリと歪むんだ。