これが、あたしの彼氏です。【完】
「あ、お母さん。あたし朝ごはん要らない」
「え。そうなの?少しくらい食べて行った方が…」
「時間無いの」
そう言って来るお母さんに申し訳なさを感じつつも、あたしは学校へ行く支度をテキパキと始めた。ドクドクと震える心臓は、未だに学校へ行く恐怖感を的確に表しているようだった。
「じゃ、じゃあ…、行って来ます…」
「はい。いってらっしゃい」
それからの30分後、何とか学校へ行く支度が終わり、そう言って微笑むお母さんを背に、あたしは少し躊躇いながらも玄関の戸をガチャリと開けた。
「………はあ」
大きく息を吸い込んで、それを勢いよく吐き捨てる。
「……大丈夫」
そんな独り言を自分に言い聞かせながらあたしは一歩また一歩と足を進めた。
トボトボと俯きながら駅を目指していると、
「何だ、そのしけた面」
「……え」
不意に聞き慣れた低い声が、あたしの耳に低く響いた。