これが、あたしの彼氏です。【完】
「……や、ざわ君…」
一瞬体と思考がピタリと停止して、目の前の矢沢君の姿に目を疑った。
「……ど、どうして」
「…別に。お前が今日学校来るって言ってたから」
「………」
そう言って、こっちへチラリと視線を向けてくる矢沢君。あたしはそれについドキッとしてしまう。
「……そ、そっか。…なんか久し振りだね」
「ああ」
「げ、元気にしてた?」
「…ああ、お前の方こそどうなんだよ」
「え、あ……」
いきなりの事で何を話せばいいのか分からず、つい不覚にも墓穴を掘ってしまった。
「……げ、元気かな、多分」
「ハッキリしろ」
曖昧な感じでそう答えて、あたしは「あはは」と薄く笑っておいた。
色々な意味で、冷や汗や心臓の音が止まらない。
もし矢沢君と一緒にいる姿を誰かに見られたらどうしようだとか、矢沢君はあたしの変な態度に気付いていないかなだとか。色んな事が頭の中を交差して、心臓もドクドクと跳ね上がる。
「…………」
矢沢君が待っているだなんて、想定外だった。