これが、あたしの彼氏です。【完】
その後、当然あたしは口を閉じたまんまで隣に居る矢沢君もこれと言って話題を零して来なかった為シーンとした沈黙が続き、これじゃ何か変だと思われるかもと勘繰ったあたしはそっと矢沢君の名前を呼んだ。
「や、矢沢君…」
「あ?」
「え、えーっと…その」
「何だよ」
「………うん」
「だから何だよ」
「あ、いや。やっぱ何でもないや。呼んでみただけ」
あたしが「ははは」と苦笑いしてそう言うと、隣に居る矢沢君はじとっとした目を向けながら「用もねぇのに呼ぶな」とそれだけあたしに返して来た。
それからの数十分後、ようやく学校に到着して矢沢君とは別れ際の階段で、バイバイと手を振って別れた。
「…………はあ」
バクバクと跳ねていた心臓も、矢沢君と別れたことでゆっくりと落ち着きを取り戻す。
あたしはトボトボとした歩調で自分のクラスへと向かうと、不意に手が震えてしまって扉をあけるのに少し戸惑ってしまった。
「………っ」
あんな事があった次の日からあたしは一度も学校へは行っていない。当然クラスメイトには逃げたと思われているだろう。
それでも、シャンとして堂々と立ち向かえる程、あたしは強くなかった。