これが、あたしの彼氏です。【完】
グッと手にチカラを込めて、いざ教室の扉を開けようとすると、
「あれ、心?」
不意に後ろから、聞き慣れた声がサラリと耳に入って来た。
「あ、由希」
「心!学校来れるようになったんだ!嬉しいなあ。一緒に教室入ろう」
「う、うん」
突然の由希の呼び掛けにあたしは心底ホッとして、開けるのにためらっていた扉をガラッと開いた。
扉を開けた途端こっちに向けられる視線は前と一向に変わらないけれど、それでもあたしは俯かずに、分の席へとスタスタと足を進めた。
――――――すると、
「…ねぇ、東雲さんって前にリンチまがいな事されたんでしょー」
「ああ、それ知ってる。同じクラスの、ほら、柄が悪い女たちにでしょ」
「まあ矢沢君と付き合ってるんだから、自業自得じゃない?」
「そうだよねー。そもそも東雲さんが矢沢君と付き合ってなかったら、こんなことにはならなかったのにね」
「でも仕方ないじゃん。あたし達だって矢沢君の事好きだもん」
「うん、そうだねー」
「…………っ」
聞きたくもない声が、いっぱいあたしの耳に届いた。