これが、あたしの彼氏です。【完】
「え、……矢沢、君」
「お前、泣いてんのか」
「い、いや。これはその…」
「どうした。何かあったのか」
「…………」
やっぱり、矢沢君は知らない。今、あたしがどういう状況の中に居るのかって言う事を。
そりゃ矢沢君には何があっても言わないと決めたのは自分なのだから、そんな事当然なんだけれども。
「………っ」
いきなり現れた矢沢君に、あたしはパッと視線を逸らして顔を下へ俯けた。
「……お前、やっぱ最近変じゃねぇか?」
「…!」
いきなり囁かれたその声に、あたしは一瞬ドクンと心臓が大きく跳ね上がってしまった。
「………え、」
「何か、あるんじゃねぇのか」
「………っ」
「何かあったら俺に言えって、前に言っただろうが」
「………」
「おい、心」
そんなの、そう簡単に言えるわけがないよ。スラリと口に出して言えていたら、あたしは今頃こんなに苦労をすることも、胸が苦しくなることもなかったに違いない。
「何で泣いてた」