これが、あたしの彼氏です。【完】
「何だかこうやって顔合わせるのって、あの時のカラオケ以来だねー」
「そうですね。秀斗先輩、あの時凄くテンション高かったですもんね」
「ええ。由希ちゃん、それって褒めてるのー?」
「さあ、どうでしょう」
「うわー、イジワルだなあ」
そんな事を言い合って笑い合う由希と秀斗先輩は、やっぱり何度も見てもお似合いだと思う。
そんな目の前の二人にボーっと見入っていると、あたしの横を歩く久瀬先輩がそっと口を開いた。
「心ちゃん、もう大分良くなった?」
「えっ」
「体の傷」
「あ、はい。…おかげ様で、大分良くなりました」
「そっか!実はちょっと気になってたんだ。でも大丈夫そうで良かった。女の子に傷が残ったら大変だもんね」
「あ、…はい。あの時先輩が、病院に連れて行ってくれたおかげです」
「ははは。いや、俺は当然の事をしたまでだよ。本当に良かった」
そう言って笑う久瀬先輩は、話せば話すほど本当に良い人だなあと強く感じる。
矢沢君とは全然違う。矢沢君は物凄く分かりにくいし。
「………」
―――って、ちょっと待った。
だから、何でいつもあたしはあの矢沢君と久瀬先輩を比べちゃうんだ。似てる所なんて、これ一つないのに…。