これが、あたしの彼氏です。【完】


「………お前、カバンは?」

「え?あ、まだ教室……」

「そうか。じゃあさっさと取りに行くぞ」

「……うん」

それだけ言って足を進める矢沢君の後ろを、あたしはトボトボとした歩調で付いて行った。

その後教室に入って忘れ物がないかどうかチェックをしていると、不意に矢沢君があたしの目の前でピタリと足を止めた。


「………矢沢君…?」

「…………」

「どうしたの……?」

「………」

「………矢沢く、」

「……、今まで気付いてやれなくて、ごめん」

「………!」

いきなり聞こえたその声はあまりにも予想外過ぎる一言で、あたしは一瞬、そんな矢沢君の言葉に何て返せばいいのか分からなくなってしまった。


「えっと、だ、大丈夫だよ…!ほら、あたし何ともないし…矢沢君が気にする事なんて…、一つも……」

(………あれ、)

「さきだって……、矢沢君が、助けに、来てくれたし……」

(あれ………何でだろう、……あたし、)
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