これが、あたしの彼氏です。【完】


「………矢沢、君…」

「……今は抵抗しても無駄だぞ」

「………」

「…離してやれない」

「………っ、…うん」

そう言って力強く抱きしめてくれる矢沢君の背に、あたしもそっと自分の腕を回した。あたしがぎゅっと矢沢君の服を掴むと、矢沢君の体が少しだけピクリと動いた。力いっぱいに抱きしめられ、矢沢君の体温があたしの体にまでじわりと沁み込んでくるようだった。


「……これからは、ちゃんと俺に言え。全力で守ってやるから」

「………え、…でも、」

「でももだけどもねぇんだよ。俺が、そうしたいんだ。分かったな?」

「………でも、矢沢君に、迷惑は掛けたくない…」

「……あ?俺を甘く見んなって前に言っただろうが」

「………っ、」

「分かったな?」

「………っ、うん…」

あたしがそれに小さく頷くと、矢沢君はまるで満足したかのように、今よりもっと強い力であたしを抱きしめてきた。
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