これが、あたしの彼氏です。【完】

「うわ、…凄い。お粥だー」

「当たり前だろ。お前、食欲はあるのか」

「うん、大丈夫。矢沢君って、料理出来るんだね」

「別に。良いからさっさと食え」

「……あ、うん。いただきます」

低い声でそう言う矢沢君にあたしは少し感心しながらも、そっと美味しそうなお粥にレンゲを伸ばした。


「…あ、美味しい」

「お粥なんて何処も変わらねぇだろうが」

「ええ、違うよ。食感とか味の違いとか」

「てめぇは何処のグルメリポーターだ」

そう言ってさり気無くあたしにツッコミをいれる矢沢君に、あたしは「ははは」と小さく笑っておいた。

「おい。食べられるだけにしておけよ」

「え？うん。まだ入ると思う」

「……食欲だけはあるんだな」

「うん。昔からそうなの」

あたしが矢沢君のおかゆをパクパクと口にしながらそう言うと、矢沢君は意外にも「ふはっ」と小さな笑みを零した。

「そんな急いで食わなくても誰も取らねえよ」

あたしはそんな意外過ぎる矢沢君の笑みに、一瞬体が固まってしまった。