これが、あたしの彼氏です。【完】
「……、え」
あたしはいきなり聞こえた知らない人の名前に、体がピタリと硬直する。
「…………」
いきなりの事で、思考が付いて行っていない。
頭が混乱している中唯一分かっているのは、矢沢君の口から初めて聞いた女の人の名前―――。
寝言でもハッキリと聞こえた、―――「絢」って人の名前。
「………」
誰なんだろうなんて考えると、不意に胸の奥がズキンと痛んだ。
「………や、矢沢君。いい加減起きて…」
その後、あたしが矢沢君の肩を少し強めに揺らすと、気持ち良さそうに眠っていた矢沢君もうっすらと目を覚ました。
「あ、悪ぃ…、知らない間に寝てた」
「……あ、いや。…大丈夫だよ…」
そう言ってムクっと起き上がる矢沢君は不意に何を思ったのか、いきなりこっちに目を向けて、あたしの方をじっと見つめて来た。