これが、あたしの彼氏です。【完】
「あ、あの……」
「ん?」
「あの、久瀬先輩…ですよね…?」
口の中がカラカラに渇く中、あたしはそっと小さな声で声を掛けた。心臓はすでに破裂しそうで、ドクンドクンとうるさく響く心臓の音が目の前の久瀬先輩まで聞こえていないか心配になる。
「え?うん。そうだけど、どうして俺の名前を?」
「あっ、え、えっと。…あたしの学年でも久瀬先輩は有名なので…」
「あぁ、部活でかな?そっか。名前知っててくれてありがとう。…君は、2年生?」
「えっと、はい」
「そっか。何組?名前はなんて言うの?」
「えっ!?……あ、2年3組。…東雲心です」
「そうかそうか、心ちゃんか。ぶつかったのは俺も悪いし、お詫びに名前覚えておくよ」
「……えぇっ」
どうしよう、嘘みたいな事が起こってしまった。あたしがずっと想いを寄せていた先輩とお話出来て、名前まで覚えてくれるだなんて。
今なら嬉しさと幸せのダブルコンボで軽く死ねるかもしれない。