これが、あたしの彼氏です。【完】
「どうした」
「あ、いや。何でも!」
「ふーん」
それだけを吐き捨てる矢沢君に、あたしはホッと胸を撫で下ろす。
その後も人口密度が高い電車に揺られながら、あたしは学校近くの駅で矢沢君と一緒に電車を降車した。
「…………」
「…………」
その後もなんとも言えない沈黙が続いてしまって、トボトボとした歩調で矢沢君の隣を歩いていると、突然矢沢君が小さく口を開いた。
「お前、」
「え…?」
「今日、やけに口数少ねぇな」
「………っ」
あまり聞かれたくない事をサラリと口にされ、あたしは一瞬心臓がドクンと跳ね上がる。
「そ、そう?……あたし、朝は低血圧だから」
「へぇ。初耳」
「……うん」
苦笑いをして、隣の矢沢君に嘘を付いた。
もちろんあたしは低血圧なんかじゃないし、口数が少ないと思える本当の理由だって事実的にはもっともっと大きな事だ。