これが、あたしの彼氏です。【完】
「……お前が口数少なかったり多かったりすると、何かと可笑しな事考えてる時だからな、てめぇは」
「……え」
「ま。低血圧とは知らなかったけど」
「………」
そう言った矢沢君が一瞬此方にチラリと視線を向ける。見抜かれてしまったような言葉を言われ、あたしは不意に掌に滲む汗をギュッと握りしめながらも、震える声でそっと矢沢君の名前を呼んだ。
「……や、矢沢君、」
「あ?」
―――心臓が、ドクンドクンとハイスピードで加速する。
「……あの、」
「何だよ」
「だから、その、」
「………言いたい事あるならさっさと言え」
「う、うん。そうだよね。あのね…っ、あの……、矢沢君、風邪の時――――」
「――うお!シン~!」
「………!」
「……あ?」
いきなり聞こえたその声に、あたしはさっきまで言い掛けていた言葉が呆気なくもサラリと掻き消されてしまった。
「……何だ、蒼稀かよ。朝っぱらからでけぇ声出すんじゃねぇよ」
「何だよ、せっかく声掛けてやったのに!あ、心ちゃんと二人きりが良かった?ああごめんなあ、気が利かなくて」
「………別に」
いきなりあたし達の目の前に現れた蒼稀君は、朝から物凄いハイテンションでそう言って不意にニシシと可愛らしく笑った。