これが、あたしの彼氏です。【完】
「久瀬と何かあったから、お前機嫌良かったんだ」
「いや。あの」
「どうせ久瀬と接点でも持ったんだろ」
「…………!」
的中している事実についピクリと肩が震え、口を閉じてしまう。
「そ、そんな事ないよ。全然違う…」
「ふーん。じゃあ何?」
「え。あ、今日の夜ご飯は高級ステーキだよって母からメールが、」
「あ?お前馬鹿?」
「…うっ」
低い声でそれだけ返され、私はまたもや押し黙ってしまう。
「……お前に昼飯、頼むんじゃなかった」
「え、」
それはつまり、あたしの自惚れが間違いでなければ、久瀬先輩と接点を持って欲しくなかったって事なのだろうか?でも、そんなこと矢沢君にどうこう言われる権利はないと思う。
「あ、あの、」
「あ?」
「い、一応言っておくけど…、これで久瀬先輩に何か…するとか、そういうのは」
「…………」
あたしがそう言うと、矢沢君の眉が思いっきり不機嫌そうにピクリと動いた。けれど。
「……なにもしねぇよ」
返って来た言葉は予想を上回るほど静かな優しい声だった。