これが、あたしの彼氏です。【完】
その後、店員さんの決死の努力の末自分からは全く想像もつかない姿が目の前の鏡に映し出されていた。ナチュラルメイクも施してもらい、家から出た時とは比べ物にならないくらいだ。
「…うわ、すごい」
そんな正直な感想を零すと店員さんは嬉しそうに笑って、「彼氏さんにも是非見せてあげましょうか」と、店の前で待っていた矢沢君に声を掛けた。
「お客様?こちらでどうでしょうか」
店員さんが店の前で待っていた矢沢君に声を掛けると、矢沢君はゆっくりとこっちへ振り向いた。
「……………」
「……………」
目を合わせた途端、何故かシーンと静まりかえる沈黙。あたしを見た矢沢君が一瞬目を大きく見開いた。
「今風のワンピースに全体的に柔らかい印象をあたえてみました。こんな感じで如何でしょうか?」
店員さんが親切に笑顔でそう言うと、矢沢君もしばらく間をおいてからそっと口を開く。
「……ああ、それ全部貰う」
「ありがとうございます!」
「え、ちょ…っ矢沢君!?絶対高いよ…!」
「だせぇお前と隣歩くよりマシだ」
「…………。半分払います…」
「お前が払う金なんてねぇ」
ビシリと矢沢君にそう言い放たれ、私が何度お金を返そうとしても矢沢君は結局最後まで受け取ってくれなかった。