これが、あたしの彼氏です。【完】
「ヤべぇ…。マジ頭っきた」
「おい。もう止めとけ、純」
すると長身の男が小柄な男を止めようと間に割って入って来た。それでも小柄な男は相当頭に血が上っているのか、長身の男の言葉を聞こうともしない。
「うるせぇ。邪魔すんな。馬鹿にされてるみたいでムカつくんだよ」
「……おい」
小柄な男は止めに入っていた長身の男の身体をドンっと押すと、鋭い目付きのまま矢沢君の前に立ちはだかった。
「そんな女なんてもう関係ねぇ。…てめぇみたいなヤツが、一番嫌いなんだよ」
「へぇ、ならさっさと殴れば?」
「………っ、」
その言葉を聞いた小柄な男の目は血走り、矢沢君に掴まれていた腕を無理やり振り解いたかと思うと、拳を大きく振り上げた。
「冷静装ってんじゃねぇぞ!」
「……矢沢君…っ」
――――――ほんの一瞬だった。
あたしが気付いた頃には、ドカッと言う鈍い音が鮮明に辺りに響いていて、それと同時に矢沢君が後ろの壁に勢い良く倒れ込んだ。