これが、あたしの彼氏です。【完】


「本当にごめんなさい…」

「テメェ、俺がさっき言った事聞こえてなかったのか」

あたしがもう一度下を向いて謝ると、矢沢君は低い声を出してあたしをジッと睨んできた。

「ううん、聞こえてた。でも、あたしも心の何処かでは多分矢沢君が来てくれるって思ってたから…、これからは自分でどうにかしないといけないなって思って…」

「……、お前にそんな勇気があるとは思えないけどな」

「うっ、勇気がなくてもまた今回みたいに矢沢君に迷惑掛けちゃうと悪いから」

「迷惑なんて思ってねぇし、自分の女を守れないようなそんなか弱い男でもない。俺を甘く見んな」

「………っ、ごめんなさい」

「謝れとは言ってねぇ」



――――――矢沢君は、自分勝手で最低な男だけれど。それでも、そこまで罪多き男ではないのかもしれない。

「ごめんなさい」と謝り続けるあたしに、矢沢君はもしかしたら気を遣ってくれているのかもしれない。

ほんの少しでも、あたしの事を考えていてくれているのかもしれない。


どんな状況でも口が悪く素っ気ない素振りを見せる矢沢君を見て、あたしはそう思わずには居られなかった。
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