これが、あたしの彼氏です。【完】
「避けてどうなる」
「え?」
「俺があそこで避けてたら、状況はもっと悪化してただろうな」
「………」
「あんな何も考えてない馬鹿に殴られんのは少し気に障ったけど」
「……」
あたしがずっと黙り込んでいると、矢沢君は私の方を一瞬チラリと見るなり、不意に「はあ」と一つ溜め息を零してきた。
「お前が居る前で、下手な真似はしない。ただそれだけだ」
「………!」
そんな矢沢君の言葉にあたしはまたしてもなんて返せば良いのか分からなくなって、ただ素直にコクンと首を縦に振る事くらいしか出来なかった。
「…ま。お前に俺の考えなんて分かるワケねぇだろうけど」
「……だっ…だから聞いたんだよ…」
あたしが徐々に声のトーンを落としながらそう言うと、矢沢君は「ああ、そうだったな」とまるで馬鹿にしたように小さく笑った。
あたしはそんな矢沢君の言葉にムッとしながらも、朝から大波乱だった初デートはゆっくりゆっくりと幕を閉じていった。