これが、あたしの彼氏です。【完】
「…ゆ、由希、もう行こう。授業遅れちゃうよ」
「え?ああ、うん。別に良いけど」
自分の事を聞かれてると思うと何だか凄く怖くなって、あたしはさっさとその場を後にしたい気持ちでいっぱいになった。
「心って、本当に怖がりよね」
「いやだって、あれはさあ、」
「まあ、ちょっと焦るよね」
「……ちょっとどころじゃないよ」
あたしがガクリと肩を落としながらそう言うと、由希は笑いながら「何かあったら矢沢君がどうにかしてくれるよ」なんて身も蓋もないことを言って来て、あたしはそんな由希の言葉に「…ハハ」と薄い苦笑いを浮かべた。
「あ!そうだ、心。言うの忘れてたんだけど」
「え?」
音楽の授業が終わった休み時間、あたしの前の席に座る由希が此方を振り向くなりニコニコとした笑みを向けながら話掛けて来た。
「どうしたの?そんなニヤニヤして」
「んー?あのね、心に良い報告があって」
「良い報告?」
あたしが何だろうなんて思いつつ首をかしげると、由希はもっと口角をニヤリと持ち上げて、「あのね、」と言葉を続けてきた。