これが、あたしの彼氏です。【完】
「心ー!早くこっち!」
「ちょっ…、待ってよー!」
時間はあっという間に過ぎて、待ちに待った久瀬先輩と遊ぶ日がやって来た。
昨日は緊張し過ぎた所為で、あんまりぐっすりと眠れていない。
「今日の心、すっごく可愛い。服と化粧品わざわざ買いに行った甲斐があったでしょ?」
「うん、ありがとう。それにメイクまで…」
「良いのよ。あんたメイクなんてした事無いと思うし。それに手先不器用だから、自分でやったらきっとぐちゃぐちゃになっちゃうよ」
「あはは、まあそうなんだけど」
そんな由希の容赦ない一言にちょっとグサッと来つつも、今日と言う素晴らしい日を完璧に迎えられたのは、全て由希のおかげだ。
「あ。もうすぐで久瀬先輩達此処到着するって!」
「……わ、分かった」
楽しそうにそう零す由希の言葉にあたしはドキドキと高鳴る心臓を必死に押さえながら、今か今かと久瀬先輩達が来るのを待った。
「う、上手く喋れなかったらどうしよう…」
「大丈夫だって、肩の力抜いて。あたしが上手くフォローしてあげるしさ」
「あ、ありがとう」
そんな不安だらけの会話を交わした数分後。
「あ、秀斗先輩!久瀬先輩!」
不意に隣の由希がブンブンと手を振って、こっちに向かって来る二人組の姿に大きく声を掛けた。
あたしはそんな由希の呼び掛けに、身体が一瞬ビクッと反応してしまう。
「ごめんね。遅れちゃって。…待ったかな?」
申し訳なさそうにそう声を掛けて来た久瀬先輩に、あたしはつい脳内が真っ白になってしまった。