これが、あたしの彼氏です。【完】


その後、恥ずかしながらもお気に入りの曲をお腹の底から歌い上げ、5分と言う長い歌を無事歌い終えると、何故か久瀬先輩達はシーンとしたままポカンと口を開けていた。

「………」

何だろうこの空気…なんて思いつつ、周りの反応に不安を抱き始めていると、

「心、あんたまた腕上げた?前より良かったよー!」

「え?」

何とも予想外な答えがサラリと返って来た。

「え。心ちん予想以上にヤバい!歌手になれんじゃねぇのっ?くそ、俺負けたー」

「いや、そんな……」

速水先輩が本気で悔しがるような素振りを見せて、両手で顔を覆う。


「…心ちゃん、本当ヤバい」

「……!」

すると、久瀬先輩が静かな声でそう言って、あたしはつい返す言葉を見失ってしまった。

「心ちゃん、すっごく上手いね。俺、歌聞いて初めて鳥肌立っちゃったよ。歌ったりするの好きなの?」

「え。あ、…はい。基本的には音楽聴く方が好きなんですけど」

「やっぱりかー。今のはホント、すっごい上手かったよ。もう一回歌って欲しいくらい」

「…えぇっ」

久瀬先輩に褒められて顔の温度が上昇する。例えお世辞だったとしても、好きな人にそう言ってもらえることが凄く凄く嬉しかった。
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