これが、あたしの彼氏です。【完】
「え、あの…あたし、まだ何も答えてないんですが……」
「断ったら、久瀬に何するか分かんねぇよ?俺」
「え。ちょ…っ、止め―――っ」
あたしが勢いよく反応すると目の前の彼は先程の笑みよりもっと不敵に口角を上げて、
「そうされたくなかったら、大人しく俺の女になれ」
上から目線な口調でキッパリとそう告げたのだった。
「……っ」
(…なんて、強引な男。最低。人の弱みに付け込むなんて)
怒りにも似た感情で震える拳を抑え、あたしは恐る恐る口を開いた。
「ど、どうして、こんなことするの…?」
「あ?」
恐怖と怒りがごちゃ混ぜになって、どうしたらいいのか分からなくなる。だけど、これだけは聞いておきたくて震えっぱなしの声で小さく問いかけた。
あたしの質問は間違っていないはずだ。なぜなら、今まで教室の隅でひっそりと平和に学校生活を送ってきた何の取り柄もない私に、こんな学校一の不良があたしに付き合えだなんて有り得ないに決まっている。
目の前の不良少年から発せられる答えを待っていると、彼はいきなり眉間の皺をギュッと寄せた。
そして一言、彼はこう言ったのだ。
「そんなもん、好きだからに決まってるだろ」
「………へ?」
思わず、間抜けな声が出た。口をあんぐりと開けた顔で先程の言葉を巻き戻しする。
「……えっ!?」
とうとう頭の奥が痛くなってきた。この不良があたしを好き?何故?どうして?どういう流れで…?接点を持った覚えなんてコレ一つないのに、どうしたらそこへ辿り付けるのか。今まで恋も恋愛もド初心者だった私には全くもってサッパリ分からなかった。