これが、あたしの彼氏です。【完】
「もう結構暗いし、送って行くよ」
「うん、送るよー」
「えっ」
うっすらと沈みかける太陽を見て、久瀬先輩と速水先輩がそう言って来た。
「あ。良いんですか?この子結構怖がりなんで助かりますー」
「ちょっ、由希…!」
送ってもらうだなんて失礼極まりないよ!と言おうとしたらいきなり耳元で「もっと一緒に居たいんじゃないの?」なんて、あたしの心を一瞬で見透かしたような一言をスラリと返してきた。
「…うっ」
「ほらね。と言っても結構暗いし、送ってもらおう?」
「……、…うん」
あたしはそんな由希に小さく頷きながらも、結局久瀬先輩と速水先輩に家まで送ってもらう事となった。
「楽しかったなあ。由希ちゃんと心ちん、また遊ぼー」
「はい、また遊べると良いですね」
速水先輩が笑ってそう言うと、隣を歩いていた由希もニッコリと笑って小さくそう返した。今日一日見ていて思ったけれど、この二人は結構お似合いなんじゃないだろうか。
「心ちゃん達、家何処かな」
「あ、えっと、私達山本駅からもうちょっと歩いたところに住んでます」
「あれ?二人とも家近いの?」
「あ、あたし達思ってたより家が近くて、降りる駅が一緒なんです。家は由希よりあたしの方が遠いんですけど…」
「ああ、そうなんだ。じゃあ山本駅は此処から結構遠いよね。送るって言っておいて良かった」
優しく微笑んでそう言ってくれた久瀬先輩に、またあたしの心臓がギューっと鷲掴みにされる。本当に久瀬先輩は、何処まで優しいんだろう。隣に居るだけで心臓がドキドキして心拍数が上がる一方だ。