これが、あたしの彼氏です。【完】
「じゃあ暗くなる前に帰ろうか」
その後、駅までの道のりをあたしは久瀬先輩と並んで歩いて、あたし達の前を由希と速水先輩が楽しそうに談笑しながら歩いている。あたしは久瀬先輩の話に耳を傾けることで精一杯で、前を歩く二人のように楽しく会話が出来ない自分を少し憎らしく思った。
「あの、久瀬先輩」
「ん?」
「あの、今日は来てくれてありがとうございました。凄く楽しかったです」
「いやいや、こちらこそ誘ってくれてありがとうね。俺も楽しかった」
胸が苦しくなるような笑顔を向けられて、あたしはついカアっと赤面してしまう。そんなあたしにチラリと視線を寄越して来た久瀬先輩は、不意に「ねえ、心ちゃん」と小さな声であたしの名前を呼んだ。
「はい…?」
「…あの、もしよければなんだけど、また俺と遊んでくれるかな?」
「えっ!?」
そんな唐突過ぎる久瀬先輩の言葉にあたしは驚愕の声を上げる。
「いや、無理にとは言わないんだけど」
「えっ、いやいや、そんな、全然…!ぜ、是非…!」
胸がドキドキして破裂してしまいそうだ。まさかそんな事を言ってもらえるだなんて想像もしていなかったから、どう反応すればいいのかいまいちよくわからない。