これが、あたしの彼氏です。【完】
――――――――嘘だ、どうして彼が此処に、
「……矢沢く…」
あたしの視線の先に突然現れたのは、紛れもなく真黒なオーラを放ちながらこっちを鋭く睨む、まるで威嚇するような目をした、―――――矢沢君だった。
「…え、心ちん、知り合い…?」
「え」
思わず矢沢君の名前を零してしまったあたしに、速水先輩が少し警戒したような目をこっちへ向けてくる。
「………え、っと」
そこから、何が気に食わなかったのか少し遠のいた先に居る矢沢君は不意に眉をピクリと動かして眉間に深い皺を寄せた。
知り合いと言えば知り合いみたいなものになるんだろうけども、矢沢君との関係性を今ここで話せるわけもなく―――――、
「…いえ、知り合いじゃありません。何も関係なんてないです」
―――キッパリと、矢沢君が見ている前で切り捨ててしまった。