これが、あたしの彼氏です。【完】



出来れば、物凄く行きたくない。
でもどうせあの矢沢君の事だから今このメールを無視しても放課後になれば教室まで押し掛けて来るんじゃないかという予想に辿り着き、あたしは渋々重たい腰を上げ、弁当とお茶だけを持って屋上へと向かった。


「……はあ」

不意に出るため息を何回も吐き捨てて、あたしは屋上の扉にそっと手を掛け、ドアノブを静かにガチャリと開ける。


「……お邪魔しまーす…」

誰かの家にお邪魔したわけでもないのにそんな意味の分からないことを口にしながら、あたしは少しだけ開けたドアの隙間から屋上をソロリと覗き見た。

すると、ガチャリと開いた扉の音に気付いたらしい矢沢君がこっちにスッと振り返る。


「何やってんだ、俺を覗いて楽しいか」

「えっ、な…っ!違っ…」

あたしを見つけるなり憎たらしい口調でそう言って来る矢沢君に、あたしはギュッと眉間に皺を寄せた。

「…覗きたくて覗いてたんじゃありません」

「そうか」

「……うん」


(―――――あれ……?)
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