これが、あたしの彼氏です。【完】
「……矢沢君?」
「あ?」
「えっとー…、いや、やっぱ何でもない」
「あぁ?だったら俺の名前呼ぶんじゃねぇよ」
「ご、ごめん」
何だろう。何だか凄く、いつもと同じ矢沢君だ。久瀬先輩と遊んで居る時に鉢合わせして、すっごい睨まれて、不機嫌なオーラを出しながらあたしの隣をズカズカと通り過ぎていったというのに…――――。
「………」
矢沢君の思考と行動が、全く持って読めない。もしかして、怒ってないのだろうか。
そんな事をグルグルと考えながらも、あたしは持って来ていた弁当箱をパカッと開けた。
「……矢沢君、今日はカップラーメンなんだね」
「あぁ。毎日パンばっか食べてると飽きるだろ」
「ああ、そっか、そうだよね。分かる分かる」
「何だお前、いきなり」
黙々とラーメンをすすり続ける矢沢君は、何を考えているのかさっぱり分からない。矢沢君はいつもとそう変わりない様子だけど、何故か今のこの空間が妙に気持ち悪いと思った。モヤモヤする、と言ったらいいのだろうか。
沈黙が続いて、少しばかり照り続ける太陽が当たって熱い。
そして、何を考えているのか分からない矢沢君が、ちょっぴり怖い。