これが、あたしの彼氏です。【完】


その後、弁当を奇麗に食べ終えたあたしはカップラーメンの次に鮭おにぎりを頬張る矢沢君にそっと目を向けた。


「ねぇ、矢沢君」

「あ?」

「……矢沢君って、何だかんだ言って心が広い人なんだね。あたし、ちょっと見直したかもしれない」

「…………」

あたしがそう言うと矢沢君は一瞬目を大きく見開いて、そのままフイっとあたしから視線を逸らした。

「え、ちょ、矢沢君?」

「………」

「……ねぇ」

「うるせぇ、今の俺に話掛けるな」

「え。ちょっ…」

どうしてだろうと疑問に思って矢沢君にもう一度目を向けると、矢沢君は小さく「チっ」と舌打ちをひとつ吐き捨てた。
髪の隙間からチラリと覗いた矢沢君の耳は、ほんの少しだけ赤く染まっているように見えた。
< 84 / 270 >

この作品をシェア

pagetop