これが、あたしの彼氏です。【完】
その後、弁当を奇麗に食べ終えたあたしはカップラーメンの次に鮭おにぎりを頬張る矢沢君にそっと目を向けた。
「ねぇ、矢沢君」
「あ?」
「……矢沢君って、何だかんだ言って心が広い人なんだね。あたし、ちょっと見直したかもしれない」
「…………」
あたしがそう言うと矢沢君は一瞬目を大きく見開いて、そのままフイっとあたしから視線を逸らした。
「え、ちょ、矢沢君?」
「………」
「……ねぇ」
「うるせぇ、今の俺に話掛けるな」
「え。ちょっ…」
どうしてだろうと疑問に思って矢沢君にもう一度目を向けると、矢沢君は小さく「チっ」と舌打ちをひとつ吐き捨てた。
髪の隙間からチラリと覗いた矢沢君の耳は、ほんの少しだけ赤く染まっているように見えた。