これが、あたしの彼氏です。【完】
「じゃあ、これから一緒に帰ろうぜ」
「え…、あの。それだけは、ホント…。それに終礼が…」
「あ?そんなもん、もう終わってんだろ。」
その言葉にハッとして腕時計に目をやると確かにいつもの終礼時刻を大幅に過ぎていた。だけど。だからといって。こんな名が知れ過ぎてる不良少年と一緒に帰るだなんて、幾らなんでも嫌過ぎる。それに確実に周りに変な目で見られてしまう。
「カバン取って来い」
「え。あの、先に、帰って大丈夫ですよ…?」
「あ?駄目だ。今からダチと会うんだよ。お前、紹介する」
「え。い、要りません。あたし帰ります…!」
「あぁ?地味女が勝手ほざいてんじゃねぇぞ」
「………っ」
ピシリと背筋が凍った。低い声と有無を言わさない目力に圧倒され、つい体が硬直してしまう。
やっぱりこの人に逆らったら、あたしの逝くべき道は奈落の底の地獄だけかもしれない。
「………分かった。行く。行くから、怒らないで下さい」
「あぁ。悪ぃ」
「……うん」
自分が物凄く情けなくて、涙が出そうだった。それに、彼がさっき放った「地味女」という言葉。あれは自分の昔からのコンプレックスでもあって、やはり高校生になった今でもそう呼ばれてしまう事実に胸がズキリと痛んだ。