これが、あたしの彼氏です。【完】
「ほら、これで早く帰れ。もう大分暗い」
「う、うん。本当にごめんね。ありがとう」
矢沢君の家を出て数十分、無事に駅へ到着すると矢沢君はあたしにスッとお金を手渡して来た。
「明日、お金返すね」
「いや、いい。今日気分を害にしたお詫びだ」
「えっ、いや、そんなのいいよ」
「良いから、それ使ってさっさと帰れ」
「………っ、…わ、分かった」
「ああ。気を付けて帰れよ」
矢沢君はそれだけ言うと、あたしが使う電車とは反対側の車両へと向かって行ってしまった。多分、蒼稀君の家に向かったんだろうなんて思いながら、あたしはそんな矢沢君の後ろ姿を、見えなくなるまでじっと見つめていた。
―――――矢沢君の心の闇が、ほんの少しでも晴れますようにと、そんな身勝手な事を思いながら。