これが、あたしの彼氏です。【完】
どうしてあたしがヤキモチなんて妬かないといけないんだ。そんなこと、断じてあるわけがない。
「違うよ。……矢沢君、自意識過剰だよね。見かけに寄らず」
「あぁ?何だとてめぇ」
「ご、ごめん…」
あたしが素直に謝ると、矢沢君は此方をじとっとした目で睨んで来た。そんな矢沢君に、あたしが「えへへ」なんて気持ち悪い笑みを零すと、矢沢君は不意に「はあ」と一つ溜め息を吐き捨てる。
「…家に呼んだのは蒼稀だけだ。片づけるの手伝ってもらってる」
「あ、そうなんだ。蒼稀君、良い人だね」
あたしが何気なくそう言うと、矢沢君は何故か眉間にギュッと皺を寄せた。どうしてそこで不機嫌になるのかあたしにはいまいちよく分からない。
その後、無事に駅へ到着すると丁度良いタイミングで電車がやって来た。それに乗り込んで、あたしと矢沢君は他愛もない話をしながらそれぞれが降りる駅で手を振って別れた。