ユーダリル

「良かった。断られるかと、思ったよ」

「そ、そんなことは……ありません」

 ユフィールがウィルの提案に異論を唱えたことは、一度としてない。全て肯定の言葉を述べ、その後をついてきた。無論これからもそのようにしていくつもりなので、逆らいはしない。

 ウィルが生活しやすいように、心がけていく。それが最大の目標であり使命だとユフィールは考えており、全ては好きな人の為であった。

「そういえば、変わったね。少し前までは、ちょっとのことで泣いたりしていたから。強くなったのかな?」

「それは……」

「今のユフィールの方が、好きだな」

 予想外の台詞に、見る見る顔が赤く染まっていく。これは告白の言葉ではなかったが、ウィルに「好き」と言われて、冷静な態度を取れるほど、ユフィールの心は強くはなかった。

 恥ずかしさを隠す為に、ユフィールは隣の部屋へと行ってしまう。突然のことにウィルは首を傾げ、意味不明なユフィールの行動に真剣に悩みだす。しかしいくら悩んでも、答えは見つからなかった。

 皿の中に残っていたスープを飲み干すと、それをサイドボードの上に置く。そして身体を寝台の上に横たわらせると、掛け布団をスッポリと頭まで被ると、体調管理の為に暫く眠ることにする。

 病気の場合、大人しくしていることが一番。それが何よりの治療方法であり、それに買い物に行くというのなら、きちんと治さないといけない。移動中は風を切って飛ぶので、下手をすれば更に悪化をさせてしまう。それが最重要課題であり、他のことは後回しになってしまう。

 だが最大の難関、アルンへの説明……いや言い訳が、思いつかない。

 布団の中で、ウィルは唸り声を発する。するとその声を聞きつけたユフィールが、駆けつけてきた。

 自分が作った料理の所為で腹を痛めたと勘違いしていたらしく、顔は青ざめている。それを見たウィルは笑いながら、唸り声の意味を伝えた。それは短い説明であったがアルンの性格を理解している為に、ユフィールも笑い返す。そして二人で、言い訳を考えていった。

「これなら、諦めてくれるかもしれない」

「お仕事は、大切です」

「セシリアさんと仲良くやりたいのなら、横暴な性格は治ると期待したいね。治らなかったら、セシリアさんが可哀想だし。いやその前に、セシリアさんが治してくれるかな。シッカリしているし」
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