ユーダリル

「ウィル様のことを心配なさっているのです。時々、危険なことをなさりますので……ですから……」

「だけど、物事には限度がある」

「そうですが……」

 アルンのしつこい呼び出しが頭痛の種だというのに、それにディオンが含まれてしまった。

 これがこの先続くとしたら、ディオンとの関係を考えなければいけない。最悪の場合、実家で暫く反省してもらう。その間、仕事はできないだろう。だが、我儘を言われるよりはいい。

 それに、性格が治れば元通り仕事ができる。無論その間、ウィルは実家で生活は行わない。泣こうが喚こうが、気にしない。いや、気にしていたら精神が持たない。それだけ、辛いものがある。

「ディオンは、反省だ」

「反省ですか?」

「そう、反省」

「少し、厳しくないですか」

「そんなことは、ないよ」

 ディオンを卵から育てたのは、ウィルであった。そして「可愛い可愛い」と甘やかせた結果が、この仕打ち。悲しくて涙が出ないというのは、このようなことを表すのだろう。溜息しかもれない。

 いつもなら、軽く流していた。しかし今回は、それを行うことはできない。ウィルは厳しい口調で「反省」の意味合いを伝えていくと、ユフィールの味方をすることにした。流石に、ディオンに付き合ってはいられない。それ以前に、買い物に行けないのが問題であった。

 こうなると何を目的として訪れたのか、わからなくなってしまう。態々ディオンの我儘を聞く為に、この場所に来たのではない。明確な目的があってこその訪問であったが、意味合いが変わってしまった。

 だからこそ、ウィルは容赦ない行動を取る。それは、ディオンに留守番をしてもらうことであった。そのことにディオンは、予想通りの反応を見せる。だが、ウィルは一度決めたことを曲げることはしない。

「行こう」

「で、ですが」

「付き合っては、いられないよ」

「そうですけど……」

 ユフィールもまた、ディオンの行動に困っていた。まさかこのように厳しく当たるとは、思ってもみなかったのだ。
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