ユーダリル
「有難うございます」
「いや、いいよ」
「私は、気付きませんでした」
「普通は、気付かないよ」
しかし、ウィルは気付くことができた。それは日頃の生活が関係しているらしいが、ユフィールが理解できるわけがない。そもそも、生活スタイルが違った。だからこそ、ウィルが守らないといけない。そうしなければ様々なトラブルに巻き込まれてしまい、最悪な結末になるだろう。
その時、騒ぎを聞きつけた警備兵がやって来た。説明が苦手なユフィールに代わって、ウィルが今まであった出来事を伝えていく。すると、警備兵の顔色が変わった。どうやら、この男の顔に見覚えがあるようだ。無論、男の表情も警備兵と同じように変化していき、微妙な空気が漂う。
「また、お前か」
「また?」
「我々にとっては、顔見知りだ」
「では――」
「嫌な常連だ」
その言葉に続き、溜息がつかれた。警備兵曰く、過去に同じ罪で5回ほど捕まっていたという。今回は、六回目。いい加減、この顔を見るのが嫌になってきたらしいが、捕まえてしまった。
捕まえたからには、取調べを行わないといけない。しかし、やる気が感じられない。要は、刑が決まっていたからだ。だが、今回は少し考えないといけない。このように、再犯が酷いからだ。
再犯が多い犯罪者は特別な刑を執行する。
こうなれば、新しい刑を用意するべきだろう。それも、二度と再犯を行いたくないような厳しい刑を。
もしアルンがこの場にいた場合、とんでもないことを思い付くに違いない。それは、空を飛ぶ生き物に括りつけ、楽しい空中散歩。無論、飛び方は容赦しない。高所恐怖症の相手なら、気絶ものだ。
それは、ある意味で適切な刑だ。安上がりで済むし、それに執行人はごく僅か。そして、最大限の恐怖が味わえる。
それが実行されることは、不可能であった。
「お二方には、事情をお聞きします。書類を作らないと――」
「それ、面倒です」
「そのように、言われましても」
「どうしても?」