ユーダリル
「お願いします」
しかし、ウィルは言葉で示したように面倒であった。今から、買い物に行かないといけない。どのくらい時間が掛かるかわからないので、少しの時間も無駄にはしたくはなかったが、ユフィールは違う。根が真面目の彼女にとって、警備兵の申し出を受け入れたかった。
気の強い性格であったら間髪いれずに、自身の意見を言っていただろう。しかしユフィールは、そのような性格の持ち主ではない。その為、静かにウィルの意見に従うことにした。
だが、警備兵にしたら困ってしまう。適当に書類を作成したとわかったら、上司になんと言われてしまうか。そのことを避けたい警備兵は、必死に食い下がる。ウィルは、彼等の苦労は理解できた。もし上司がアルンのような性格であったとしたら、只では済まないだろう。
何度も頼み込む警備兵に、同情心が湧いてくる。するとウィルは、仕方なく受け入れることにした。
「すみません」
「でも、ひとつお願いがあります」
「何か」
「彼女は、いいですよね」
「貴方が来て頂ければ、構いませんが」
「有難うございます」
そのことに簡単に礼を言うと、ユフィールにこれからのことを伝えた。だがいきなりのことに、ユフィールは珍しく反論を言ってきた。それは寂しさが生み出した感情であり、我儘ではない。それにユフィール自身、このようなことは苦手であったので、逆に有難かった。
「目的の店へ連れて行くよ」
「す、すみません」
「店の中には、悪い人物はいないよ」
「は、はい」
「時間は、掛からないと思うから。では、連れて行きます。この近くの店ですので、すぐです」
そう言葉を残すと、ウィルはユフィールの背中を押していく。それは強制的とも無理矢理とも思える行動であったが、反論はない。ただ静かに従い、目的の店へと向かうだけであった。
店に着いたと同時に、ウィルはユフィールと別れてしまう。特に言葉を掛けることはなかったが、心配しているということは伝わっていた。その為、悲しいという表情は浮かべることはしない。