ユーダリル
一方ウィルは、警備兵と共に何処かに行ってしまう。その後姿を暫く眺めていると、ユフィールは店の中へ入ることにした。このまま、店の前で立ち尽くしているわけにはいかない。
何より、店側の迷惑になってしまう。そして、選んで買うという本来の目的を果さないといけない。
店内に立ち入った瞬間、豪華絢爛の雰囲気に言葉を失ってしまう。店内に並べられている品物は明らかにユーダリルとは違っており、田舎と都会の差を見せ付けられたようで気分が重い。
「いらっしゃいません」
オドオドとした態度を見せているユフィールに、店員が声を掛けてきた。そして、どのような服を求めているのか尋ねてきた。だがユフィールは、上手く説明することができない。
どのような服が売られているのか、正確にわからないでいたからだ。それに、緊張感が混じる。
よって「可愛らしい服」という言葉しか、伝えることができなかった。しかし、それだけで十分。
相手は、服に関しては専門家。その為ユフィールを店内の奥へ連れて行くと、様々な服を用意していく。そしてどの服が彼女に似合うのか、店員達が好きに選んでいった。短い時間で終了する。そのように考えていたユフィールであったが、何と一時間以上もこの状況が続く。
その間、ウィルは訪れることはなかった。
◇◆◇◆◇◆
更に、三十分後――
買い物を終えたユフィールは、店の前でウィルが迎えに来てくれることを待っていた。その手には白い大きな箱が目立ち、大事そうに抱えている。勿論、この中に購入した服が入っていた。
値段は、思った以上に高い。これも自身の職業を伝えていなかったのが主な原因と思われるが、これほど高いとは思っていなかった。何せ、一ヶ月の給料の半分を持っていかれた。
口が煩い人間であったら、抗議しているだろう。それほど、この服の値段は本当に高かった。
しかし値段相応に、可愛い服。これを見たら、絶対にメイド仲間が騒ぐだろう。彼女達は、お洒落に煩い。それにパーティーが行われた場合、貸してほしいとせがまれるに違いない。