ユーダリル
ウィルの言葉の通り、メイド達の動きが一段と活発になってきた。それはアルンが結婚をする……という噂が流れた時点からはじまり、今に至る。機会は、今しかない。そのように判断したのだろう、お陰でウィルは屋敷での生活が辛くなってしまった。やはり、メイドは強かった。
「それでは、お話します」
「で、何?」
「……お金がないのです」
「お金?」
「お給料は、高いと思っています。ですが、今回は……生活に、お金が足りるのか心配で……」
予想していた内容と異なっていたことに、ウィルは目を丸くしてしまう。てっきり、ディオンについて心配しているのかと思っていたが、実際は自分の生活面を心配していた。しかし、わからないことではない。一人暮らしをしているウィルは、金の有難みは身をもって知っている。
その為、同情をしてしまう。そしてウィルは、次の給料日はいつなのか尋ねていた。ユフィールの話では、給料日は二週間後。住み込みのメイドではないので、様々な意味で不便してしまう。
昼食に関しては、問題ない。しかし、朝食と夕食は考えないといけない。それなら姉のセシリアに頼めばいいのだが、恥ずかしいらしい。
一緒に暮らしているのだから、何ら問題はないと思われるが、気持ちの問題だという。しかしウィルは、そのことがわからない。
だが、手助けの方法は思い付く。それは、ユフィールに副業を行ってもらうということであった。
「そうだ。仕事をする?」
「どのような、仕事ですか」
「洗濯・掃除をしてほしいな」
「それは、いつも行っています」
「いや、違う」
それは、否定の言葉であった。そのことに首を傾げ、何を言いたいのか考え込んでしまう。
しかし、答えは見付からない。するとウィルが、その答えを提供してくれた。その瞬間、ユフィールは固まってしまう。何とウィルの頼みごとは「自分の世話」というものであった。
「いいのですか?」
「何か、不満でも」
「いえ、それはありません」