ユーダリル
「なら、お願いしたいな。給料は、支払うよ。と言っても、高い給料を支払うことはできないけど」
付き合っているということから、ウィルは簡単に頼みごとをしていく。無論、断る理由などない。ユフィールは嬉しそうに微笑むと、ウィルの言葉を受け入れていく。一方のウィルは、胸を撫で下ろしていた。
「は、はい」
「そう言ってもらえると、助かるよ。仕事をしている時は、家の管理ができないからね。だから、誰かに頼もうと思っていた」
「でしたら、別の方に……」
「それも考えたけど、やっぱりユフィールの方が頼みやすい。他のメイド達は、口煩いところがあるから」
「それは、ウィル様を心配なさっているのですよ」
そのように言うが、ウィルはメイド達の裏側に見え隠れするどす黒いオーラを感じ取っていた。あのオーラは、アルンと似ている。これに殺傷能力は有していないが、気分的に悪い。
アルン一人であったら、何ら問題はない。しかし複数集まったら、相手を殺しかねない。心配しているということをユフィールは言うが、そのようなことは絶対にない。彼女達は、面白がってやっている。
そのような人物に頼んだら、結果は目に見えていた。その為、彼女に頼むしかない。その方が気楽で安心でき、以前の世話の件で彼女の誠実さは証明済みだ。
「いつからでしょうか」
「そうだね。明後日から、お願いできるかな。結構、部屋が汚れているのだよ。御免、本当に」
「いえ、構いません」
「有難う。助かるよ。それじゃあ、次の買い物に行こう。それが終わったら、食べ物を買って……ディオンは、怒っているかな? 何か美味しい物を買って行き、機嫌を直してもらわないと」
「そうですね」
ディオンの話が出た途端、二人は笑い合う。買い物に来る前の姿は、面白いものがあった。ウィルが恋しいのだろう、今も泣いているに違いない。見た目は大人だが、心は子供。これはこれで可愛いのだが、これからのことを考えると問題は多い。いつまでもベッタリできない。
これが、いつ改善されるのか。残念ながら、それは不明な部分が多い。よって、時として強硬手段に及ばないといけない。しかし、ウィルは甘い部分が多い。このように、美味しい食べ物を買おうと考えているのだから。こうなると、ますますディオンが甘えてしまう。