ユーダリル
ユフィールは、メイド仲間がウィルのことを心配している意味を理解した。これでは、物事が進まない。アルンに関しては、平気だ。セシリアが、全てを管理しているので問題はない。
こうなると、ユフィール自身が動かないといけなくなってしまう。大きく頷き意を決すると、勇気を出した。
「……ウィル様」
「何?」
「お食事は……」
「それは、買うよ」
「いえ、今回のことではありません。お手伝いに関してのことです。掃除と洗濯と仰いましたが、お食事は……」
「忙しいと思うから、別にいいよ。掃除と洗濯だけで、大変だと思うから。それに、そこまではいいよ」
しかし、ユフィールは頭を振るう。掃除や洗濯は、いつも行っている仕事であった。ウィルは大変だということで断っているが、思っている以上に大変な仕事ではない。大変だと言っていたら、屋敷で働くことはできない。その為、更に仕事を増やしてもユフィールは平気であった。
それに、ウィルに食事を作りたいと思っていた。以前、看病を行っていた時「美味しい」と言って、料理を食べてくれた。そのことが、今でも忘れられない。だからこそ、積極的に動いてしまう。それにユフィール自身、ウィルが喜んでくれるのなら何でもする勢いがあった。
だからこそ奥手であったユフィールは、積極的な一面を見せる。その証拠に、徐々にであったが二人の差が縮まっていた。
「それなら、頼むよ」
「はい。わかりました。それでしたら、ピーマン料理を作らせて頂きます。ウィル様は、食べてもらえませんので」
「そ、それは……」
「以前、お約束したと思いました」
「……忘れていたよ」
確かにそのような約束をしていたが、ウィルの記憶には一部分しか残っていない。だが、ユフィールはハッキリと覚えている。こうなると「知らない」という言葉は、全く通じない。
いつまでも「ピーマン嫌い」として、生きていくことはできない。ウィルが結婚し子供が生まれた場合、子供にどのように説明をすればいいのか。無論ピーマン嫌いのウィルの言葉に、説得力はない。それを避けるには、ピーマンを食べられるようにならないといけなかった。