ユーダリル
だが、それは遠い未来の出来事。ウィルは、今のことしか考えられない。その為、逃げ出そうとしていた。
「ウィル様」
「いや……本当に、それだけは御免」
「好き嫌いは、いけません」
「そんなことより、ディオンの食事を買いに行こう。この話の続きは、その時にでもしよう」
「ウィル様って、面白いです」
「そ、そうかな」
「はい。とても――」
トレジャーハンターを職業にしているということで、外見上は強く逞しい雰囲気が強い。だが内面は、このように可愛らしい部分を持ち合わせていた。ウィルのことを詳しく知らない人物であったら、ピーマン嫌いには気付かないだろう。
それほど、ピーマン嫌いはミスマッチであった。だが、人間は欠点を持ち合わして生きている。
また、アルンとウィルは性格面が似ている部分がある。しかし、ウィルの方が取っ付きやすい。何より、冗談が通じる。一方アルンは、冗談を本気で受け止めてしまうので困ったものだ。
だからこそ、ウィルの方が人気が高い。そして、ユフィールと幸せになってほしいと、メイド達は思う。その結果、様々な裏工作が行われる。そのひとつが、今回の買い物であった。
屋敷で仕事をしている時は、アルンの目がある。しかし、今はその心配はない。これを気に進展を――と望むのは、当たり前のことである。それがわかっているからこそ、ユフィールは頑張る。
「兄貴のようには、なりたくないからね」
「アルン様は、お強いです」
「色々な意味で、最強かもしれない。さて、行こうか。これ以上ディオンを待たせると、煩い」
「ウィル様の買い物は?」
「それは、ディオンの顔を見てから」
その言葉に、ユフィールは大きく頷く。ディオンと別れて、どれくらい時間が経過しているだろう。
二人にしてみれば大した時間経過ではないと思われるが、ディオンは違う。10分でも、長く感じているに違いない。そしてウィルが顔を見せた瞬間、泣いて暴れるだろう。無論、ウィルと一緒に行ったユフィールに容赦しない。下手をしたら、大怪我を負わすに違いない。