ユーダリル
「それに、ディオンは大人だ」
「そうですけど……」
「このままでは、恋愛ができないからね」
突然の内容に、ユフィールは目を丸くしてしまう。恋愛――この単語が、ウィルの口から普通に発せられるとは、思いもしなかった。だが、確かに言葉として表した。これから考えられることは、ウィルが真剣に自身の将来を考えはじめたということの表れでもあった。
「ウィル様!」
「な、何?」
「その……結婚は……」
途切れ途切れの言葉で、質問を投げ掛けていく。真剣に将来を考えているというのがわかった今、次はこの質問しかない。一体、何を考えているのか――これにより、ユフィールの今後の振舞い方が劇的に変わってしまう。もし考えていないのなら、身を引かないといけないからだ。
唐突な内容にウィルは目を丸くしてしまうが、次の瞬間噴出してしまう。何故そのような質問をするのかと、態度で示す。ウィルは、結婚に興味を持ちつつあった。しかし、それは今ではない。その為このような質問をしたところで、適切な回答が得られるわけがない。
それどころか、逆にディオンを怒らせてしまう。ユフィールの質問内容を察したのか、鋭い視線を向けてくる。そして牙を剥き出し、鼻息を荒くする。そして、いつでも跳びかかれる体勢を取った。
「どうした?」
確実に、ディオンのオーラには殺気が含まれていた。ユフィールを甚振ろうとしているのだろう、真っ直ぐ一点を見詰めている。先程は、空中を飛んでいたので手出しできなかった。
今は地上にいるので、襲い掛かろうと思えば簡単に襲い掛かることができた。だが、ウィルが側にいる。その為、襲い掛かりたくともできなかった。それにより、ストレスが蓄積していく。
無論、限界は訪れるもの。
次の瞬間、ディオンの感情が爆発した。
ディオンの発狂した声に、ユフィールの悲鳴が混じる。修羅場状態の今、ウィルも止めることができなかった。
◇◆◇◆◇◆
その後、多くの人間の手によってディオンは捕獲された。