ユーダリル
新しい一歩へ
早朝からユフィールは、大忙しだった。それはウィルとの約束事を果す為に、懸命に仕事を行っていたからだ。彼女が今、仕事を行っているのはウィルが使用している家。そう、特別休暇を貰っていた。今回の件は、多くの者を驚かせた。無論、好奇心旺盛のメイド達が食い付いてくる。
根掘り葉掘り聞き出そうとしたが、ユフィールは頑張った。
「ウィルと二人で――」という気持ちが彼女を強くしていたのか、一切理由を話そうとはしなかった。
それどころか、反論を行う。
勿論、進化したユフィールの姿に周囲は戦く。
彼女の身に、何が――
メイド達は、口々に噂をしていく。
それは下手な妄想を生み出し、違う世界へ精神をトリップさせてしまう。お陰で、噂話に花が咲く。だが、ユフィールの気持ちを瞬時に理解した人物がいる。それはメイド長のミランダと、姉セシリアだった。二人は、ユフィールの味方。そして、必要以上に騒ぎ立てることはない。
無論、ウィルと仲良くやってほしいと思っている。それにより「特別休暇」ということで、ユフィールを向かわせた。
そして、最大の難関のアルンは――
「好きにしろ」
という言葉を発してから、無言を突き通す。どうやらセシリアの迫力に負け、渋々折れたという感じであった。
しかし逆に、アルンが静かな方がセシリアにしてみれば有難かった。そう、アルンが動くと必ず周囲に迷惑が行く。
今回は、無事に物事が進んでいる。
一部分を抜かして、ホッと胸を撫で下ろしていた。
そして、恋の進展を祈る。
◇◆◇◆◇◆
「ウィル様」
「……うん?」
ユフィールの言葉に、ウィルは目覚める。それと同時に欠伸をし、周囲に視線を走らせた。何故、ユフィールが――ふと、疑問が生じる。しかし徐々に思考が働いてくると、自分が頼みごとをしたということを思い出す。ウィルはポリポリと頭を掻くと、朝の挨拶をした。