ユーダリル
テーブルの上に、朝食を並べていく。彼女が作った料理は、野菜たっぷりのオムレツ。それに、二個の丸いパン。そして、並々と注がれたミルク。どれも美味しそうであったが、丸いパンの表面は少し焦げていた。それにより、これはユフィールが頑張って焼いたのだと判断できる。
「苦かったら、残して下さい」
「パン?」
「多分、上手く焼けたと思いますが……」
「うん。大丈夫。ほら、中は綺麗だ」
ウィルは椅子に腰掛けると同時に、パンを手に取る。そしてユフィールの目の前で、半分に割った。言葉の通り、中は綺麗に焼けている。熱々の湯気は食欲をそそり、ウィルは大口でパンを頬張った。
「美味い」
「本当ですか!」
「リクエストしていい?」
「は、はい」
「大きいパンが食べたい」
「頑張ります」
「有難う」
満面の笑みを浮かべるウィルに、ユフィールは頬を赤く染めてしまう。やはり、好きな人物からこのようにリクエストをされると、それだけ料理に信頼を持っているという証拠だ。
余程料理が美味いのか、ウィルはバクバクと食べている。そして、ミルクを一気に飲み干す。一見、食べ方は汚い。しかし、人間美味しい物を目の前にすると、行動がぶっ飛んでしまう。それだけ、ユフィールの料理が美味しかった。それにより、瞬く間のうちに胃袋に納まる。
「ご馳走様」
「お昼も美味しい料理を作ります」
「楽しみにしているよ。で、後片付けが終わったら一緒に買い物に行かない? ほら、材料も少ないと思って」
「宜しいのですか?」
「荷物、重いと思って」
「有難う……ございます」
最近、女心を理解してきたのか。些細な心遣いに、ユフィールの心の中が暖かくなっていく。両者は、結婚していない。だが、今の生活スタイルは完全に新婚生活に等しい。ユフィールは食器を片付けつつ、そのような妄想をしていくが、下手な妄想は精神を悪くする。