ユーダリル
勿論、ウィルは何も悪くはない。ただ、感情がそれに伴わなかったのだ。ユフィールは、懸命に頭を振る。そして、早く買い物に行こうと促す。
急な態度の変化にウィルは驚くが、ユフィールからの誘い。大きく頷いて返事を返すと、買い物への支度をはじめた。
◇◆◇◆◇◆
15分後――
ウィルとユフィールは、一軒の雑貨屋で買い物をしていた。二人が見ていたのは、食器類。そう、ユフィールが落とし壊してしまった食器を選んでいたのだ。それに、お揃いの食器も探す。
「これはどうかな」
「素敵です」
「じゃあ、これにしようか」
「はい」
二人が選び出した食器というのは、可愛らしい黒猫が描かれた皿だった。勿論、お揃いで購入。しかし皿を購入するだけで、全てを手に入れたわけではない。次に、お揃いのマグカップを探す。
「いつも、どのような物を使用している」
「姉は仕事の関係上、大きい物を使っています。ですが、私は小さい物を使用していまして……」
「コーヒー?」
「は、はい」
ピンポイントで飲み物を言い当てたウィルに、ユフィールは目を丸くしてしまう。しかし、セシリアの仕事内容を考えれば、簡単に言い当てるのが可能だ。そう、アルンの仕事内容が深く関係している。そう、溜まりに溜まった仕事を遅い時間まで片付けているからだ。
女性にとって徹夜は大敵だが、仕事が不真面目なアルンの秘書をやっているので、文句を言っていられない。それにより眠気を掃うために、毎日のように大量のコーヒーを飲み続ける。説明口調で語っていくウィルに、ユフィールは納得したように頷いていく。まさに、それは正しかった。
「す、凄いです」
人間観察が苦手なユフィールにとって、的確にセシリアの行動パターンを言い当てたウィルは、尊敬の対象と見てしまう。ユフィールは胸元で両手を組むと、輝く瞳をウィルに向ける。しかしウィルにしてみれば褒められる内容ではないので、苦笑いを浮かべてしまう。