ユーダリル

 選び出したマグカップは、ユフィールの印象にピッタリだった。それにウィル自身も、満足している。彼女の代わりにマグカップを受け取ると、先程選び出した食器と一緒に清算に行こうとする。その途中で、ユフィールに止められた。どうやら、まだ欲しい物があるらしい。

「よ、宜しいでしょうか」

「いいよ」

「有難うございます」

「で、何が欲しい」

「こ、これを――」

 ユフィールが指差したのは、お揃いのティーカップ。その選択にウィルは、首を傾げてしまう。マグカップを購入し、更にティーカップを購入する。何を目的に買うのかわからないウィルは、質問をした。

 それに対してるユフィールは、頬を紅潮させていく。そして、何に使用したいのか小声で話していった。彼女が購入したいという訳は、一緒に午後のお茶会を開きたいということ。それを聞いたウィルは驚き、反射的にユフィールから視線を外すとポリポリと頭を掻いた。

「いいね」

「で、では……」

「菓子は?」

「勿論、用意します」

「それじゃあ、楽しみだね」

「はい」

 ウィルの言葉に、ユフィールは嬉しそうに微笑む。これで、夢のひとつを叶えることができた。

 そう、彼女の夢はウィルとのお茶会。

 それも、二人っきり。

 屋敷でお茶会を開いた場合、メイド達が邪魔をしてくる。強制参加という言葉が似合い、ウィルを勝手に持っていってしまう。無論、大人しいユフィールが反論することはできない。

 それにより、今それを求めた。そして、結末は望んだもの。よって、今から気合が入ってしまう。ユフィールはお揃いのティーカップを手に取るとウィルの背を押し、会計へ向かう。

 仲良く並んで会計をしている姿。恋人同士は勿論、新婚夫婦という言葉が似合う。その為、店主に茶化されてしまう。過敏に反応を示したのは、ユフィールだった。一方のウィルは、固まってしまっている。最近、恋愛について少しずつ認識しているので、彼も過敏に反応を示した。
< 161 / 359 >

この作品をシェア

pagetop